2019年10月8日、山極壽一総長は、2018年ノーベル平和賞受賞者であるコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師と対談しました。
ムクウェゲ医師は、紛争が続くコンゴ民主共和国の東部で病院を設立し、性暴力の被害に苦しむ人々の治療や社会復帰に長年尽力してきました。そして、「戦争や武力紛争の武器としての性暴力」の撲滅に貢献してきたことが認められ、2018年にノーベル平和賞を受賞しました。ムクウェゲ医師は10月2日に来日し、東京、広島などで講演を行った後、立命館大学での名誉博士号授与式に参加するために京都を訪問していました。
ホテル・オークラで行われた対談では、山極総長も、同国東部で実施していた野生ゴリラの調査が内戦により中止されてしまった経験を述べました。ムクウェゲ医師は、治安の悪化により外国人の渡航が禁止されると、取り残された現地の人々は海外からの人的・物的援助にもアクセスできなくなると訴えました。海外の大学が実施できる援助の例として、現地で治療に当たる医師や看護師の育成、医療機器の導入や修理、また、性暴力による心理的被害の実地調査などがあるが、その実現は非常に難しいと説明しました。
対談では、このような制約を乗り越えるために京都大学が具体的に何を出来るか、という点に多くの時間が割かれました。山極総長は、本学を卒業した同国出身者を通じて核となる人的交流を築き、両国をつなぐプラットフォームを作る必要があると述べました。また対談に同席していた重田眞義アフリカ地域研究資料センター教授も、本学はエチオピアにアフリカオフィスも設置したことから、アフリカ内の第3国にて医師の研修や共同研究も可能ではないか、と提案しました。
過密なスケジュールにも関わらず、熱意を持って語るムクウェゲ医師の姿に参加者は皆感銘を受けていました。